今日は休刊日なので、『月々日々に――池田先生の折々の言葉』と『寸鉄』はお休みです。
かわりに、新・人間革命第26巻を紹介したいと思います。
座談会では、男子部員や婦人部員の体験発表があった。教員たちは、鼻先でせせら笑うような態度で話を聞いていた。彼らは、宗教というだけで、迷信や非科学的なものと思い込み、教育者である自分たちには、無縁なものと決めつけていたのだ。
「宗教に基づいていないすべての教育は、実りのないものである」とは、ドイツの教育家フレーベルの警句である。
先入観は、真実を見る目をふさいでしまう。
質疑応答に入ると、教員たちは、「信心で幸せになれるというなら、学会員に失業者や、病気で苦しんでいる人がいるのは、おかしいではないか」などと反論し始めた。
担当の地区部長は、「今は、そうでも、信心を続けていけば、必ず解決できます」と答えた。すると、「それは、逃げ口上だろう」「では、いつになったら解決するんだ。明日か、明後日か!」「結局、宗教はアヘンなんだよ。信じれば、刹那の陶酔が得られるだけの話だろう」と口々に言いだすのだ。
彼らは、何を言っても、真面目に話を聞こうという態度ではなかった。学会への偏見があり、ともかく言い負かしてやろうという感情が先に立っていたのであろう。
地区部長は、彼らの勢いに押されてか、口ごもり、立ち往生してしまった。額に汗が滲んでいた。一緒にいた男子部の幹部は、席を外し、外に出て行った。
青年が出て行くと、教員の一人が言った。
「若いのは、逃げ出してしまったじゃないか。わしらに負けるのが怖いんだろう」
ほどなくして、青年は、別の座談会に出席していた山本伸一を連れて帰って来た。
伸一は、御書を手にして姿を現すと、仏壇に向かって、音吐朗々と題目を三唱した。厳粛な雰囲気が会場を包んだ。
それから、彼は、丁重にあいさつした。
「私は、創価学会の山本伸一と申します。このたび、東京の本部から派遣され、札幌に来ております。よろしくお願いいたします」
それから、教員たちに尋ねた。
「お名前は、なんとおっしゃいますか」
彼らは、伸一から漂う気迫に気圧されたのか、か細い声で名前を言った。
なかには、名乗ろうとしない人もいた。すると、伸一は、再度、「私は、山本でございます」と言い、相手の顔に視線を注いだ。すると、しぶしぶ名を告げた。
仏法対話に際しては、常識豊かに、そして相手を包み込む慈愛の大きな心が大切である。とともに、何ものをも恐れぬ、毅然とした態度で臨むことである。
伸一は、静かだが、力のこもった口調で語り始めた。
「もし、皆さんが、仏法について、本当にお聞きになりたいのなら、お話しさせていただきます。まず、私の話を最後までお聞きください。仏法の概要について述べたあと、質問もお受けし、懇談いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですね」
皆、呆気に取られたような顔で頷いた。
伸一は、自分の入会の動機から話を起こして、人間は、信じる対象によって、大きな影響を受けていることを語った。そして、宗教とは根本となる教えであり、宗教のいかんが人間の生き方、考え方を決定づけるだけでなく、文化、社会の根底をなすことを訴えていった。さらに「日蓮大聖人の仏法とは何か」に言及した時、教員の一人が口を挟んだ。
「日蓮は、仏教のなかでは異端なんじゃないかね」
別の教員が、勢いづいて叫んだ。
「日蓮は、排他的なんだよ。宗教間の争いを生む、危険思想じゃないか!」
伸一は、それを手で制しながら言った。
「私の話を、最後まで聞いてくださると約束されたではないないですか! これでは、まともな語らいはできません。今日は、これで終了とします。解散しましょう。しかし、本当に話をお聞きになりたいのでしたら、また、いらしてください」
教員たちは、中傷するような言辞を吐きながら、席を蹴るようにして帰っていった。また、石崎聖子が連れてきた、三、四人の婦人たちも、あいさつも早々に出ていった。
聖子は、夫と共に、伸一を別室に案内すると、ひたすらに詫びた。
「山本室長、こんな座談会になってしまって、本当に申し訳ありません!」
伸一は、さわやかな笑みを浮かべた。
「広宣流布の戦いには、いろいろなことがあるものです。たくさんの経験、歴史を積んでいくことが大事なんです。今日は、忘れ得ぬ座談会の思い出ができたではないですか」
伸一には、聖子の胸の内がよくわかった。彼は、笑顔で包み込むように語った。
「この座談会は、大成功でしたよ。何も悲観する必要はありません。あの教員の方々の心には、しっかりと、仏法のこと、学会のことが打ち込まれていますよ。それに、私は早く終わって、ご主人とお話ができればいいなと思っていたんです」…
「新・人間革命第26巻 厚田の章 pp70-74」より
(感想)
本当は、この後の池田先生が、どのようにこれらの教員の生命を見抜いているかまで書きたかったですが、時間がないのでここまでにしたいと思います。池田先生の人間革命、新・人間革命に残された全てのナラティブは、とても共感できるものであるとともに、こういうことを池田先生もご経験されてきたんだと知ることができ、とても勇気をもらえます。だからこそ、偉人の本を読むことは大事だと思いますし、自分自身が共感したことに、勇気を出して挑戦していくことが自分の血肉になっていくのだと思います。
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