今日は聖教新聞が休刊日なので、『わが友に贈る』『寸鉄』はお休みです。
7月9日付の「〈HEROES 逆境を勝ち越えた英雄たち〉第32回 ダンテ」の一部を紹介します。
…(ダンテは)30代でフィレンツェの最高指導者に就任。だが、栄光の絶頂で再び試練に襲われる。フィレンツェを手中に収めようと画策する教皇らにより、無実の罪で永久追放されてしまったのだ。
それでも権力に屈することはなかった。ペンの炎を燃え上がらせた彼の有名な詩にこうある。
「沈黙することは/その敵にわが身を結びつけるほどの卑しい/下劣さである」
魂の言論闘争はやがて、後世に輝く大叙事詩『神曲』の執筆へとつながっていく。
正しい人が誹謗中傷され、悪人が民衆から尊敬を集める――この「正義と邪悪の転倒」をいかにして正すか。ダンテは亡命生活の中で思索を深めた。そして、真実を世に示すために『神曲』の筆を起こしたのである。
彼が友人に宛てた手紙には、こうつづられている。「作品の目的は、人びとを今陥っている悲惨な状況から遠ざけ、幸福な状態へと導くことにある」と。
…『神曲』は、1万4233行に及ぶ長編叙事詩である。主人公のダンテが作中の師匠である詩人ウェルギリウスと共に死後の世界を巡るという壮大な物語だ。
永久に罪を罰せられる地獄界、罪を浄化する煉獄界、正義と慈悲にあふれた天国界の旅を通して、人間の善悪を克明に描き出している。
地獄での光景に恐怖を抱くダンテをウェルギリウスは叱咤する。
「心配するな。私たちの行手は誰も遮ることはできぬ」「望みは確かだ、元気を出すがいい」
傍観、貪欲、暴力、偽善、中傷分裂、裏切り……。地獄界ではさまざまな罪を犯した者たちが報いを受けていた。そこでは、現実世界で権勢をふるった聖職者や為政者たちが断罪されていた。
ダンテは火を吐くように叫ぶ。
「おまえらの貪欲のために善人が沈み悪人が浮ぶ悲しい時世となった」「おまえはとんでもない悪事をしでかした」
鋭く糾弾する姿をウェルギリウスは満足げに喜んだ。ダンテは師の導きによって、勇敢な青年へと成長を遂げたのである。
「私がいかほど先生に恩を感じているか、私は生きている限り、世に語り世に示すつもりです」――師に応えようとする報恩の心こそがダンテの原動力であった。
「聖教新聞」より
(感想)
少し長い文を引用しました。ダンテの神曲がこのような世の中を正そうとする熱い思いで書かれたものだとは全く知りませんでした。聖教新聞は、このように難解な古典も分かりやすく繙いてくださるので、とても勉強になります。これからも学び続けていきたいと思います。
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